成長フェーズに移行しつつあるドローン市場。その現状と課題、可能性について、日本で初めてレベル4(有人地帯での目視外飛行)を成功させたドローン専業メーカーACSLの鷲谷聡之CEOと当社の竹林憲明が語り合いました。
■既成概念を打ち破り、価値観を変えるパワフルなツール

- ━━ドローンビジネスの可能性は
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【竹林】ドローンは多くの可能性を秘めていますよね。人手や手間がかかる業務や危険がともなうことをドローンで補うことによって、効率が格段に上がります。物流、土木、建築、林業、農業など、あらゆる分野で活用でき、災害対策や地域が直面する課題の解決にも貢献できます。
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【鷲谷】ドローンの凄さは、これまで社会をつくりあげてきた既成概念の前提を壊してしまうところです。まずドローン物流が広まると、ドローンの離着陸場所を巡って建物の設計を見直す可能性が出てきて、価値観も変わっていくでしょう。たとえばマンションは一般的に上層階ほど価値が高くなりますが、ドローンの離着陸場所が屋上になったら、飛行音などの影響で最上階は住居としての価値が下がり、代わって中間階の価値が高くなるのかもしれない。
時代がもっと進んでエアモビリティ社会になれば、変化はもっと顕著になります。離着陸場所を屋上あるいは中間階に設けるという考えが出てきて、エレベーターの設計や、それに付随する設計などがどんどん変わります。そんな時代になるのはずっとずっと未来なんですけど、視点を未来に置いて振り返って考えると、今やるべき方向性、最適な道筋が見えてきます。そもそもこれまでの街づくりというのは、重力に囚われた設計なんですね。ドローンは、そんな当たり前の常識を覆し、価値観を変えてしまうほどのパワフルなツールだと思っています。
■保守メンテナンスを担う販売店の役割

- ━━ドローンが普及するために必要なこととは
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【竹林】昔はなにごとも人力でやっていて、移動は歩きか馬車で、自動車が本当にありがたいという時代がありました。日本は当初、外国車ばかり。そんな中で豊田喜一郎氏が国産車づくりを始めるわけです。機械に整備と修理は付きものですから、トラブル対応を含めて、そういった地道なサポートを地域に根付いた販売店が担い、ニーズや不具合内容をメーカーにフィードバックすることで、自動車の普及、技術進化に貢献してきました。ドローンの普及も、自動車と同じだと思うんですよね。アフターサービスを担う販売店の役割がとても重要になってきます。
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【鷲谷】自動車が誕生したばかりの頃、馬車の社会を守るために、自動車は人より速く走れないという規制がロンドンにありましたよね。冗談みたいな話なんですけど、当時は真剣。馬車を前提に考えるから、どうしてもそうなってしまいます。
そんな時代から自動車が主役の時代になって“地面空間”が劇的に変わりました。それは人の移動、物の移動がガラッと変わったからです。これをドローンやエアモビリティに置き換えると、人間の高さを越えた空間、鳥以外何もいない空間が劇的に変わるということです。
今はドローンにとって黎明期ですが、自動車がそうであったように、事故や故障といった万一のトラブルに対するアフターサービスが普及の鍵になるでしょう。このフェーズを超えた先にあるのがドローンが当たり前になっている社会だと思うので、販売店さんには頑張っていただきたいですね。
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【竹林】ご存知の通り、モビリティナビの母体は、自動車の販売、整備を手掛ける三重トヨタグループです。長年蓄積したノウハウを活かせるのがモビリティナビの強みです。販売、保守、メンテナンスはもちろん、保険も扱っています。さらに練習場を整備して、国家資格を取得するためのスクールも始めます。ワンストップで対応できるようになれば、お客様にも喜ばれるでしょう。
ただ、ドローンビジネスそのものにまだ実験的な側面があって、可能性がある分、課題もあります。私たちは開発先行型企業ですので、正直、手探りの部分もあります。それでも私たちからドローンをいち早く購入して、いち早く利用していただくお客様が多くいます。そのようなお客様に対して、ドローンが直接もたらす効果だけではなく、先行導入して良かったと思っていただけるような何かしらのベネフィットを提供したいと考えています。
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【鷲谷】革新的なツールが世に現れると、雇用を奪うとか、誰かを不幸にするといったネガティブな意見が出てきがちですが、ドローンはそうではないですよね。社会をよりスマートにするものだと思っています。
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【竹林】そうですね。三方よしのビジネスを展開できるのがドローン。売り手よし、買い手よし、世間よし。私はそこにとても魅力を感じています。

- ━━ドローンと自動車のシナジーについて
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【鷲谷】離着陸場所について今は固定的というかスタティックな考え方になっていますけど、流動化を進めて、もしトラックからドローンを飛ばせることができたら、物流はもっと効率的になり、ドラスティックに変わる可能性もあります。そうなるにはドローンを運搬する自動車側の改良も必要になってきます。
これは僕の実体験の話なんですけど、レベル4(有人地帯での目視外飛行)の型式認証を取得する際、そこに至るまでの準備と実験がとても大変。というのも自動車に充電器や発電機、モニターなど諸々機材を詰め込んで実験現場に出向き、着いたら外に出て氷点下の中でセットアップして、寒さに耐えながらドローンを飛ばしてと、とにかく大変でした。これと同じような状況になりそうな警備や災害での利用を考えると、ドローンの運搬に特化した専用車が欲しいですね。
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【竹林】実はそれ、モビリティナビで進めているんですよ。車両のルーフ部分が離着陸場所になっていて、充電器はもちろん、ドローンが撮った画像を映すモニターも乗せているので、車内にいながらドローンの操縦ができます。警備や消防で使うことを想定していますが、ほかの分野でも需要はありそうですね。
それとアイデアとしてあるのがドローンのサブスク。トヨタ自動車でKINTOという新車のサブスクがあるのですが、ドローンのサブスクにも可能性があると思います。ドローンの耐用年数が自動車と同じくらいあれば、ドローンの中古機のサブスクも考えられます。それにメンテナンスサービスが充実していればお客様もより安心していただけます。サブスクあるいはレンタル、シェアができるシステムがドローンにあれば、利用頻度が少ないお客様に喜ばれると思います。
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【鷲谷】そうなるとドローンの耐久性や信頼性が今以上に求められるわけですから、そのためにも私たちメーカーがもっと頑張らないといけませんね。

■PROFILE
株式会社ACSL 代表取締役CEO 鷲谷 聡之
早稲田大学創造理工学研究科修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2016年にACSL入社。2018年より現職。